はじめに

皆さんはどんな理由で食品を購入しますか?売れる商品、市場価値の高い食品を開発するために最も重要な要素は何でしょうか?厚生労働省とJETROが近年実施した大規模調査により、消費者が最も重視する食品の価値は何よりも「おいしさ」であることが明らかとされました。これは日本だけでなく世界7ヶ国でも共通する結果でした。当研究室の名称である食品化学の分野は、産業界からシーズを得て、また産業界のニーズに応えて発展していく実学(役立てることを目指す学問)です。また食品を分子レベル(化学)で解析するために、分析化学、細胞生物学、遺伝子工学、情報科学、タンパク質工学、生理学、薬理学など様々な最先端バイオテクノロジー関連技術を駆使する学祭領域でもあります。当研究室は、食品の価値として最も重要な「おいしさ」、そしてトクホや健康食品など社会的にも大きな関心を集めている「機能性」を中心テーマに据え、”味と香り”の制御・活用を目指す食品機能開発化学を推進しています。

おいしさの分子設計技術の開発

食品開発において、おいしさのデザインは非常に重要かつ難しい課題です。嗜好食品はもちろん、トクホや機能性表示食品のような健康効果を目的とする食品であっても、食べ続けるためにはおいしさが求められます。当研究室では、培養細胞を用いたヒト味覚・嗅覚受容体の客観的・定量的な解析システムを開発し、未だ不明な点が多い”味と香り”の分子メカニズムの解明を目指しています。本研究は新規味成分の探索・創製、苦味マスキング剤の開発、後味の良い低カロリー甘味料の開発、香りのプロファイリング技術の構築等を通じて、テーラーメイドな「おいしさ制御技術」の確立へとつながることが期待されます。

 

【最近の成果】

香りのプロファイリング技術として応用可能な受容体解析法の開発に成功しました。

第66回日本食品科学工学会大会優秀賞受賞、第19回静岡ライフサイエンスシンポジウム優秀賞(1位)受賞

「大豆の青臭さ」の感知に関わるヒト嗅覚受容体を特定しました。

2019年度日本食品科学工学会中部支部大会優秀賞(1位)受賞

混合物である食品の辛味を高感度に測定(数値化)できる新しい方法論を開発しました。

ペプチドアレイと培養細胞を組み合わせた新しい苦味マスキング技術を開発しました。

2016年度日本農芸化学会大会トピックス賞受賞、The 20th SFHL Poster Award

無味と考えられてきたタンパク質が”コク味”機能をもつことを発見し、また新たな高機能”コク味”成分を創製しました。

第66回日本食品科学工学会大会企業賞受賞、第65回日本食品科学工学会大会優秀賞受賞、2017年度日本食品科学工学会中部支部大会優秀賞受賞

酵母における香り成分の生成を増強する方法を開発しました。

2018年度日本農芸化学会大会トピックス賞受賞、第69回日本生物工学会大会トピックス賞受賞、2017年度日本食品科学工学会中部支部大会優秀賞受賞

香酸柑橘の香り成分による清涼感(冷感刺激)のメカニズムを明らかにしました。

緑茶や抹茶の甘味が、実は甘味受容体を介して生じる感覚ではないことを明らかとしました。

食品機能の解析

健康寿命伸延や医療費抑制が喫緊の課題となる中、食品成分の持つ生体調節機能が注目されています。本研究室では、科学的根拠に基づく食品機能成分探索を効率化するため、創薬標的分子でもあるGタンパク質共役型受容体、栄養素輸送体、イオンチャネル等について、バイオインフォマティクスや有機化学の専門家、食品素材メーカーとも連携しながら、ハイスループットな機能解析システムの開発を進めています。また近年では、味蕾や嗅上皮だけでなく皮膚や消化管、筋肉等の組織においても味覚・嗅覚受容体が発現し、化学物質の感知によって抗2型糖尿病、抗肥満、皮膚バリア機能改善等の生体調節機能に関わることが明らかとなってきています。そこでこれらの“身体が感じる味と香り”に着目した新しいコンセプトの食品機能研究にも注力しています。

 

【最近の成果】

鼻以外の2つの組織に嗅覚受容体が機能的に発現していることを見出しました。

ペプチドアレイを応用した食物アレルゲン検査用抗体開発法を確立しました。

抗2型糖尿病効果の期待できるジペプチドを網羅的に解析しました。

2015年度日本農芸化学会大会トピックス賞受賞

他の機能性成分の効果を増強する新しいタイプの機能性ペプチドを発見しました。

2015年度日本農芸化学会大会トピックス賞受賞

栄養ペプチドの生体吸収に関わるペプチド輸送体の基質多選択性を明らかとしました。

共同研究
 当研究室では甘味、苦味、コク味、辛味、刺激味、清涼感、香りや臭いなどの感知に関わる多くのヒト化学感覚受容体(400種類以上)の応答評価システムを有しています。各種フレーバー素材の科学的評価や新機能素材の開発、また要望に応じた新規受容体の応答評価システムの構築など、共同研究のご相談は随時受け付けています。お気軽にお問い合わせください。

【問い合わせ先】
主任教員:伊藤圭祐(准教授)
E-mail: sukeito(ここに@を入れてください)u-shizuoka-ken.ac.jp
アクセス:静岡市駿河区谷田52-1 静岡県立大学食品栄養科学部棟4階 5403室(食品化学研究室)