研究項目 参照:研究概要
  1. 光合成核遺伝子 (RBCSCAB 他) の発現制御 --- 遺伝子発現を ON あるは OFF に制御する因子の解明    

  2. 葉緑体光合成遺伝子 (rbcLpsaA 他) の発現制御 --- RNAポリメラーゼσ因子による調節機構の解明    

  3. 乾燥耐性および土壌析出塩分耐性遺伝子 --- 突然変異体の選抜と解析    

  4. 遺伝子操作を基盤にした薬食生産のための植物の活用 --- より安全な植物遺伝子導入技術と植物抗体への活用    

  5. 植物由来機能性・薬効成分の探索 --- メタボローム解析と動物評価系を用いた解析    

  6. チャの機能開発 --- 発現遺伝子解析を基盤とした代謝制御機構の解明と活用    



研究の背景
 我々が現代社会の存続を望むならば,ヒトの生命と生活を支える食糧とエネルギーの持続的な供給を実現しなければならない.これらは「植物」の活用により可能になる.植物は光合成能を有し.太陽エネルギーを利用して食糧・バイマスを生産する.この作業の駆動部が植物細胞内の「葉緑体」である.また,葉緑体はヒトの健康保持に不可欠な機能性成分の基本骨格を提供する.本研究室では,この葉緑体の機能構築・維持を制御する機構を解明してきた.さらに,葉緑体機能を介した植物の改良へと研究を進めている.モデル植物シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) の研究を基盤とし,レタス等の野菜類およびチャへと研究を発展してきた.

 応用研究には,基礎研究の蓄積が不可欠である.光合成遺伝子は,緑葉特異的に発現するが,それでは何故,根ではなくて葉で発現するのであろうか? この疑問に答えるために,分子遺伝学的な方法により複数の原因遺伝子を特定した.一方,葉緑体は光合成を行う場であるが,それらの部品は光エネルギー変換の過程において損傷を受け,これらを常に新しいものに取り換えていかなければならない.遺伝子発現のレベルでこの制御機構を解明した.

 世界レベルで緑地の荒廃が進んでおり,津波被害を含め,農耕地の塩分集積は深刻である.この種の問題の解決に向けて,分子遺伝学的な方法を駆使して,複数の耐塩性遺伝子を見いだした.

 本研究室では,すべて植物由来の遺伝子を用い,生態系への影響(遺伝子汚染)を回避する技術を開発した.折しも,米国農務省は,植物由来の遺伝子のみを用いて作出した遺伝子組換え植物に対して,遺伝子組換えの規制外とする見解を発表した.本研究室の技術を持ってすれば,遺伝子組換え植物に対する過度な懸念は払拭できるものと考える.これらを活用し,付加価値の高い遺伝子組換え野菜類を作出する研究を展開している.

 静岡県は茶の生産額日本一を誇り,茶の活用は地域産業の活性化および人々の健康保持に寄与する.チャのゲノムサイズは,モデル植物シロイヌナズナの約 30 倍,またイネの約 10 倍 であり,さらに有用品種は栄養生殖 (挿し木等) で増やすため,純系ではなくヘテロ接合体である.これらはゲノム解析を困難にする要因となり,未だにゲノム情報が乏しい,まずは,発現している遺伝子の解析 (expressed-sequence tag, EST) から開始し,代謝酵素遺伝子を同定してきた.

研究内容紹介記事