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食品栄養科学部 環境生命科学科 物性化学研究室

研究概要

旧建築資材に含まれる防蟻剤の神経毒性評価

クロルピリホス(CPF)は、有機リン系殺虫剤であり、有機塩素剤クロルデンの代替防蟻剤として建築資材へ塗布・使用されてきた。CPFは、クロルデンと比較して高分解性かつ広範囲な殺虫スペクトルを示す一方、 急性毒性が高く、微量長期暴露に由来するヒトへの影響、特に神経系への悪影響が懸念されることから、シックハウス症候群や化学物質過敏症等の原因物質として疑われている。

CPFを含む有機リン殺虫剤の作用機序は、標的生物の体内で分子内のP=S基がP=O基へ酸化変換され、これに伴うアセチルコリンエステラーゼ (AChE)阻害能が増大することに起因する。一方、CPFは分子内に塩素原子を有する化合物であり、生体外では酸化変換よりも脱塩素化反応が 優位に進行すると考えられる。

つまり、室内環境におけるCPFの神経毒性をより包括的に明らかにするには、CPFだけではなく、CPFの脱塩素化体、加えてこれらの P=O体(酸化変換物)のAChE阻害を評価する必要があると考えられる。しかし、脱塩素化CPFは市販されておらず、その毒性についての情報は十分 とは言えない。そこで今回、CPFとその脱塩素化体、さらにそれらのオキソン体P=O基変換体を合成し、神経毒性を評価することに加え、さらに CPFとそのオキソン体の混合物を用いた複合的な神経毒性試験も併せて実施した。