研究概要

蛋白質工学は、遺伝子工学、酵素学、構造生物学、計算科学などの技術により蛋白質の働きを理解し、目的に合わせて機能を改変し応用を図る学問です。私達の研究室では、中野を中心に開発を続けている世界最高精度のin silico スクリーニング技術、人工蛋白質設計技術と蛋白質工学の融合研究を行っています。私達が開発中の新しい技術とは、世界中の生物から解析されデータベースに登録されている膨大な配列情報を、機械学習法により網羅的に解析し可視化、設計した人工蛋白質および相同蛋白質の分析結果と照合することで、更なる設計技術の向上とともに社会実装可能なレベルまで蛋白質を改良する技術です。難しいように聞こえるかもしれませんが、卒研生も数ヶ月で人工蛋白質を設計しています。
 多様な生物の生命活動を支える蛋白質は、宿主生物以上に多様で個性的です。人工設計において、この個性に向き合いながら設計と検証を繰り返すことが肝要です。これまでに、50を超える蛋白質をin silicoスクリーニングもしくは人工設計し、実際に蛋白質としての機能も解析してきました。結果、①蛋白質の生産性の向上、②蛋白質の安定性の向上、③酵素の活性化エネルギーの低下、④酵素の基質特異性の拡張、⑤酵素の至適pHの改変等に成功してきました。また、酵素の新規探索・分類手法、立体構造情報も加味した新規蛋白質設計法等も考案・開発中であり、新しいアイデアが次々と生まれるような環境で研究をしています。これら技術の有用性は、技術プランコンテストで最優秀賞、各大学や研究所、企業との共同研究にて実証されつつあります。蛋白質は地球上あらゆる生物の生命活動を支える主役であり、その多様な機能は、医療・食品・ファインケミカル等の幅広い分野に技術革新をもたらしてきました。私達の新しい手法は、その機能を強化したり、新しい機能を蛋白質に付与しすることで、幅広い分野において、更なる技術革新を可能とする技術です!

1. 新規アミノ酸配列解析手法の開発
 タンパク質工学的手法により酵素やタンパク質の機能を向上させる研究は、現在まで広く行われています。特にタンパク質の立体構造 (形) を参考に、機能向上の達成を目指す、いわゆる合理的設計法が広く使われています。一方で、タンパク質の形が利用できない場合、合理的設計法の適用は難しくなります。このような課題に立ち向かうべく、我々はタンパク質のアミノ酸配列のみを利用する、新規なアミノ酸配列解析手法と人工タンパク質設計法の開発を行っています。独自開発したINTMSAlignとその応用法の開発・実証試験を通し、自然界由来のタンパク質の機能を超える、数多くの人工タンパク質設計に成功しています。国内外の大学や研究所、企業との共同研究を通して、更なる手法の改良に取り組んでいます。
2. コンピュータとin vitro実験を融合した酵素工学研究
 次世代シーケンサーに代表される技術は、莫大なデータを高速で生み出します。このデータを加工して有効活用する手法は、創薬や酵素応用の分野にブレイクスルーを生み出す可能性を秘めています。我々は酵素機能を向上させる変異点(hot-spot)を、データベースに登録されている一次配列情報から探索する手法の開発を進めています。本手法を応用してデータベースから酵素の配列を人工的に全設計し、機能を持った酵素を作りだすことにも成功しています(以下のHNL85, HNL54, HNL30)。コンピュータ解析の結果を、実験で確認することを通して研究を進めています。
3. アミノ酸酸化還元酵素群の構造機能解析
 酸化還元酵素は有用物質の合成や、食品試料中の特定化合物(食品添加物やアミノ酸など)の濃度定量に使われています。我々はアミノ酸、アルコール、アミンや窒素酸化物に作用する酵素群について、それらの作用機構を明らかにすることを目指しています。X線結晶構造解析や生化学的手法に加え、分子動力学法(MD)や量子化学計算(QM)など、計算化学的手法も用いて研究を進めています。
4. 核内受容体と薬剤の構造機能解析
 
5. 計算化学解析用ソフトウェア開発
 コンピュータを用いて蛋白質工学研究を行う上で、使いやすいソフトウェアを開発することは必要です。我々は外部共同研究を通して、計算化学解析用ソフトウェアを開発しています。計算化学の結果(タンパク質)を可視化するために、世界的に広く使われているPyMOLのプラグインも開発しています(立教大学 常盤教授との共同研究)。プラグインの開発は、H27年度 統合化推進プログラム[統合データ解析トライアル]の助成を受けて行いました。