Fat bloom caused by partial de-oiling on chocolate surfaces after high temperature exposure
チョコレートのファットブルーム形成の新たな条件を見出し,ブルーム形成機構を解説した論文.チョコレートを融点より少し高い温度で融かし,その後V型の融点より低い温度でしばらく保持,さらに冷却すると,チョコレート表面から液状油が内側に吸い込まれて表面がブルームする.表面の平坦性が失われればブルームするのだが,一般的には表面に針状結晶が発達することで平坦性が失われるのに対し,この条件では中身がスカスカになることで平坦性が失われる.カラーが多いせいか,PDFの見栄えがいい印象.
Multiple β Forms of Saturated Monoacid Triacylglycerol Crystals
油脂結晶の多形について,典型的な3種類の中にさらに異なる多形があることを示した論文.以前より異なる多形の存在は示唆されていたが,多形の違いなのか結晶サイズや欠陥の影響なのか結論がついていなかった問題に答えたもの.作り方により異なるβ型が計4つ見つかった.α型やβ’型からの多形転移により異なるβ型になることをDSCとSR-XRDで明らかにした.多形とは何か?を考えるきっかけになった論文.はじめのアイデアは広島に着任直後にPPPの顕微鏡観察だったので形になるまでにずいぶん時間がかかってしまった.Open Access
High Intensity Ultrasound-Induced Crystallization of Mango Kernel Fat
マンゴー核油に対して超音波を印加した研究.タイとのエキゾチック油脂シリーズ第3弾.超音波印加により核形成が促進されることは知られていたが,超音波出力に注目してその影響を調べた論文.超音波が結晶量,サイズ,多形転移にも影響することを明らかにした.核形成のinduction time測定に透過光強度測定を利用したのが僕のアイディア.以前にbiomineralizationの研究で,カルサイトの結晶化観察に使っていた.レーザーとPhotodiodeでくみ上げた.Pimが初めてのはんだ付けをしたのがよい経験.タイ,シラパコーン大学(Silpakorn University)との共同研究.
In Situ Observation and Physical-Chemical Characteristics of Rambutan (Nephelium lappaceum L.) Kernel Olein Crystals obtained from Acetone Fractionation
ランブータン種子から油脂を分画し,その性質を明らかにした.他の油脂と混ぜ合わせることで油脂の性質を改善することを目的として,飽和脂肪酸を含む天然油脂を探索し,ランブータン核油に着目した.得られた油脂はアラキジン酸に富み,40~70℃の融点を示すとともに,β'型に結晶化した.タイ,カセサート大学(Kasetsart University)との共同研究.
Coconut oil crystallization on tripalmitin and tristearin seed crystals with different polymorphs
高融点油脂(トリパルミチンとトリステアリン)を種結晶として,ココナツ油(ヤシ油)の結晶化に及ぼす影響を調べた論文.種結晶の多形を変えた時に,ココナツ油の多形がどのように変化するのかを放射光X線回折,熱測定,顕微鏡観察により明らかにした.種結晶無しではココナツ油はβ’型に結晶化するが,α,β’型の種結晶を添加するとココナツ油β’型の結晶化が促進された.一般的に添加物による油脂結晶化制御では,類似の脂肪酸を持つ添加物を選ぶことで油脂との特異的な相互作用を期待する(テンプレート効果)が,本研究では明らかに異なる脂肪酸鎖長を持つ種結晶を選ぶことで,副格子構造の影響を明らかにした.油脂結晶のエピタキシャル成長について深く調べた研究.
Epitaxy, Seeding, Template, Polymorphism
Built with Mobirise
Website Maker