モンゴル国では自動車の普及が急激に進んでいる。理由として主に三つ挙げられる。一つ目は民主主義国家移行による市場経済体制移行が行われ、さらに外資規制が緩和された。それに伴い資源開発が盛んになることで国民所得が上がり、自家用車を購入し始めたためである。二つ目は日本で自動車リサイクル法が施行され、廃車処理と比較して中古車輸出業者に売却した方が利益がある。その結果、海外輸出に拍車がかかり良質で安価な中古の日本車が大量に出回ったためである。三つ目は冬が長く公共交通機関が発達していないモンゴル国では自動車の需要が大きく、先述の中古車が大量に供給される状況と重なったためである。
一方、中古車に使用されている自動車用鉛バッテリーは、車両本体に比べ、ライフサイクルが短く、非合法のリサイクルが活発に行われている。さらに、廃棄物を適切に処理する施設や法律が整っていないため、鉛をはじめ重金属による環境汚染が懸念される。しかしこれらの非合法な業者に政府は介入できておらず、汚染の実態も明らかでない。
本研究では、自動車の普及に由来する環境汚染の可能性について検討するために、モンゴル国のウランバートル市の鉛精錬施設周辺の土壌を対象に、重金属濃度の測定および汚染源の推定を行った。