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食品栄養科学部 環境生命科学科 物性化学研究室

研究概要

定量的ノンターゲット分析(qNTA)に基づく再生プラスチックの評価技術の検討

近年,持続可能な開発目標(SDGs)により,プラスチックのマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが推進されている。リサイクルによって生成される再生プラスチックには,原料に由来する添加剤などに加え,再生工程で非意図的に発生する副生成物など,多種多様な化学物質が含まれている可能性がある。 これらの化学物質は,再生プラスチック製品の廃棄に伴い,マイクロプラスチックなどの媒体を経由して水環境に放出された場合,生態系に影響を及ぼすことが懸念される。また,再生プラスチック製品に含まれる化学物質に人が曝露した場合,健康影響を及ぼす可能性がある。

化学物質を網羅的に分析する手法としてノンターゲット分析が行われるようになってきた。しかし,定性された化学物質の定量評価には,従来の分析法と同様に,物質ごとに分析法を開発する必要がある。分析法の開発には標準物質が必要となるが, ノンターゲット分析で検出されるすべての物質の標準物質が市販されている可能性は低く,特に非意図的に生成される副生成物は標準物質を得るのが難しい。また,分析法を個別に開発していくことは時間的にも,経済的にも,非常に困難である。

本研究では,以上の課題に対して,水素炎イオン化検出器と質量分析計のデュアル検出器を用いたポストカラム反応ガスクロマトグラフ(GC-MS/PR-FID)を用いたノンターゲット分析を,再生プラスチック由来の化学物質に適用し,網羅的な定性・定量分析を行った。さらに,再生プラスチック製品中に存在する化学物質の室内空気やハウスダストを介したヒト健康への影響や,廃棄後に環境中に拡散した場合の生態への影響を考慮した,リスクポテンシャルの推算スキームを構築した。