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食品栄養科学部 環境生命科学科 物性化学研究室

研究概要

ウォーターサーバーの飲料水中に含まれる有機リン化合物の汚染要因の検討

有機リン化合物は難燃剤や可塑剤として広くプラスチック製品に使用されている。有機リン化合物は通常,添加型の添加剤として使用され,製品素材と化学的に結合していないことから, 揮発や拡散によって容易に環境中に放出される可能性がある。有機リン化合物の曝露経路として,室内空気を介した経気道曝露やハウスダストを介した経口曝露が主要とされているが, 実際,水道水やボトル入り飲料水およびウォーターサーバーの水から,有機リン化合物が検出された事例が報告されており,飲料水が有機リン化合物のヒトへの重要な曝露経路となる可能性が示されている。

水はヒトにとって最も重要な資源であるため,ヒトの健康を保つためには,飲料水の安全性に深く考慮する必要がある。近年,水道水から有機フッ素化合物(PFAS)が検出されたことにより,飲料水の安全性に関心が高まっている。また,災害への不安からくる飲料水の備蓄のために, ウォーターサーバーの市場拡大が続いている。ウォーターサーバーは,洗浄などにも用いられる水道水と比べ,より飲用に特化しており,また,温水を即座に吐出できる加熱機構を備えているという特徴がある。加熱による火災を防ぐため,ウォーターサーバーは, 高濃度の有機リン化合物を含んでいる可能性が考えられる。一部の有機リン化合物においては中程度から高い水溶性を持つため,有機リン化合物を含む製品が飲料水と接触することで溶け出す可能性があるが,我が国における測定例はないのが現状である。

本研究では,飲料水を介した有機リン化合物の曝露・リスク評価を行うことを目的とし,液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)を用いてウォーターサーバーの水中に含まれる有機リン化合物の分析を行い,濃度に影響を及ぼす要因の検討と初期的なリスク評価を行った。