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食品栄養科学部 環境生命科学科 物性化学研究室

研究概要

機械学習を用いた実排水中抗菌剤の各種酸化法による除去性能の予測と評価

難生分解性である抗菌剤は,生物学的な活性汚泥法では分解・除去が難しく,下水処理場などから水環境中に放流されていることが報告されている。環境中に残留抗菌剤が存在することにより,細菌の薬剤耐性(AMR:antimicrobial resistance)が高まり, 耐性遺伝子を広めてしまう可能性がある。世界保健機関 (WHO)の試算によると,今後効果的な対策を講じなければ,AMRが直接的に起因する年間死者数が,2050年には1000万人まで増加すると予測されている。

その対策としてオゾン酸化法や促進酸化法などが開発・検討されているが,それらを定量的かつ詳細に比較した例は限られている。特に,実排水に含まれる夾雑物質による排水処理性能への影響を評価した例は少ない。また,抗菌剤と実排水は多種多様であり,それぞれの組み合わせにおいて排水処理性能を実験的にすべて評価することは困難であるため,予測手法の確立が求められている。

本研究では,7種の抗菌剤を対象とし,オゾン酸化法およびオゾン/過酸化水素法,フォトフェントン反応による分解実験の除去性能を評価・比較した。分解実験は,夾雑物質の影響を評価するため,純水中に加え,5種の実排水中(事業所排水)でも行った。また,反応速度論的な考察と機械学習を組み合わせて,実排水中の除去性能を予測するin silico手法の開発・評価も行った。