難燃剤(FRs)は可燃性を抑制する目的で様々な室内製品に使用されている化学物質である。なかでも,リン系難燃剤(PFRs)と臭素系難燃剤の多くは添加型の難燃剤であり,揮発や拡散によって容易に環境中に放出される可能性がある。
近年,室内製品との直接接触に伴う経皮曝露は,FRsのヒトへの曝露経路の一つとして注目されている。しかし,室内製品の性状やFRsの種類,衣服の着用が皮膚透過に与える影響については,情報が限られている。また,製品に使用されるFRsの種類や濃度は様々であり,すべての製品において皮膚透過試験を行うことは困難であると考えられる。そのため,経皮曝露量の推算方法の確立が求められる。
本研究では,室内プラスチック製品として自動車シートを選定し,人工皮膚を用いた自動車シート中FRsの皮膚透過試験を行い,製品性状やFRsの種類の違い,衣服の着用が経皮曝露量に与える影響を評価した。また,機械学習を使用した経皮曝露量の推算法の初期検討を行った。