空気清浄機に対する一般的な空気清浄能の評価試験では,単一の化学物質を除去対象とするなど,実際の環境からかけ離れた任意の条件下で行われていることが多い。一方,空気清浄機が用いられる実空間では,多種多様な化学物質が共存しており,除去対象物質以外の夾雑物質による影響(例えば除去速度の低下)により,現行の評価試験の空気清浄能とは異なる可能性が考えられる。そのため,汚染源となる実製品から放散する複合的な化学物質の影響を含めた性能評価が重要である。
分解反応を伴う空気清浄法に関しては,除去対象物質の分解に伴い,非意図的に副生成物が生成することが報告されている。分解反応の副生成物として生成するアルデヒド類は,高リスク懸念物質になり得るため,空気清浄能として,副生成物を含めた総合的なリスクを検討する必要がある。
本研究では,鉄触媒を用いたアルデヒド類の分解反応を用いた新たな空気清浄技術の開発を行い,自動車室内を対象により現実に近い環境での空気清浄能の評価も行った。まず,除去対象物質として高リスク懸念物質であるホルムアルデヒドを選定し,現行の空気清浄能の評価法に則り,その除去性能を評価した。その後,より実空間の状況を考慮するため,ホルムアルデヒドの主要な発生源となる自動車内装材を発生源として用い,その他の揮発性有機化合物(VOC)を含む状況における空気清浄能の評価も行った。また,空気清浄に伴って非意図的に生成する副生成物についても測定を行った。