バイオ液肥は循環型社会の創生に資する技術として注目されており,近年の肥料の価格高騰に加え,農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」における化学肥料の使用量を2030年までに20%,2050年までに30%低減するという目標に向けて,その利用が推進されている。一方,需要を超えたバイオ液肥は多大なコストやエネルギーをかけて処理されているのが現状であり,需要拡大のための工夫が必要とされている。その例として,土壌を用いない植物工場や水耕栽培への応用を考えると,バイオ液肥中のアンモニア態窒素を植物がより利用しやすい形態である硝酸態窒素に効率的に変換する手法の開発が求められている。
現在,バイオ液肥中のアンモニア態窒素の硝化方法として,硝化細菌を用いた生物学的な手法が検討されているが,アンモニア態窒素濃度が高い場合,硝化反応が強く阻害されてしまうことが知られている。一方,光触媒を用いた物理化学的な硝化反応は,高濃度のアンモニア態窒素に対しても原理上有効であり,特に酸化チタン光触媒は,安価でハンドリングが容易であることから有望だと考えられる。しかし,バイオ液肥中のアンモニア態窒素の硝化に関する研究例はなく,反応メカニズムの解析やバイオ液肥中に含まれる夾雑物質の影響評価,プロセスの最適化など,実用化に向けた検討が必要とされている。
本研究では,酸化チタン光触媒を用いたバイオ液肥中のアンモニア態窒素の硝化実験を行い,実験パラメータ(初期pH,光触媒濃度,光強度,触媒の結晶構造など)およびバイオ液肥中の夾雑物質の影響を定量的に評価することで,光触媒による硝化メカニズムの解明とその最適化を試みた。