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食品栄養科学部 環境生命科学科 物性化学研究室

研究概要

プラスチック製品中の臭素系難燃剤の経皮曝露に与える製品の経年劣化の影響評価

難燃剤(FRs)は可燃性を抑制する目的で様々な室内製品に使用されている化学物質である。残留性有機汚染物質(POPs)に指定されたポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)の代替として,新規臭素系難燃剤(NBFRs)が使用され始め,その需要が高まっている。しかし,そのほとんどはPBDEsやリン系難燃剤と同様,添加型の難燃剤であり,高分子材料と化学的に結合していないため,揮発や拡散によって製品から環境中へ容易に放散する可能性が考えられる。

FRsの曝露経路として,室内製品との直接接触に伴う経皮曝露が注目されている。しかし,既存の経皮曝露評価法においては,溶媒に溶解させたFRsを試験用の皮膚(例えば人工皮膚)に添加した例が多く,室内製品の性状を考慮できていない。特に,プラスチックは使用し続けることで経年的に劣化し,表面および内部の性状が変化する可能性がある。例えば,マイクロプラスチックは,経年劣化により物理的および化学的に構造が破壊されることで,FRsの放出が促進される事例が報告されている。以上のことから,室内製品の部材として最も汎用的に使われているプラスチックの劣化は,室内製品との直接接触に伴う経皮曝露に影響を及ぼす可能性が考えられるため,プラスチックの経年劣化のFRsの皮膚透過速度や経皮曝露量に及ぼす影響を評価する必要がある。

本研究では,新品および劣化させたBFRs含有樹脂を人工皮膚に接触させて皮膚透過試験を行い,経皮曝露に与える経年劣化の影響を定量的に評価した。