創薬、機能性食品、内分泌撹乱物質探索を可能とする新たな手法に
中野祥吾助教らは、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の加来田博貴准教授らを中心とした岡山大学、日本大学、立教大学、アイバイオズ株式会社との共同研究により、レチノイドX受容体(RXR)に対する結合物質の簡便な探索技術の開発とその作用機序の解明に成功しました。
RXRは、これに結合する低分子によって、標的とする遺伝子の発現を制御します。脂質・糖代謝に関わる受容体であることから、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、認知症やパーキンソン病などの治療を目的とした分子標的として創薬また機能性食品開発がされています。また、環境中のRXR結合性分子を不必要に摂取すると内分泌撹乱になりかねません。
しかしながら、これまでのRXR結合性分子の探索・検出法は、ラジオアイソトープ(放射性同位体)を用いる方法や細胞を用いる方法であり、法規制、特殊装置の必要性、時間を要するなど課題がありました。RXRと本研究で創出した蛍光性のRXR結合性分子を混合した溶液に、評価したい溶液を加え、汎用性の高い測定機器(蛍光プレートリーダー)を用いて蛍光を測定することで、その溶液中のRXR結合性分子の有無が数時間内に判定できます。この技術を使えば、創薬や機能性食品開発のみならず、湖沼水、海水中のRXR結合性分子の探索が容易に行え、RXRへ作用する環境汚染物質の探索が簡便になります。また、この技術をもとに、エストロゲン受容体や甲状腺ホルモン受容体を対象とする結合性分子の探索技術への応用も期待されます。
本研究成果は9月5日、アメリカ化学会誌『Journal of Medicinal Chemistry』のJust acceptedとして公開されました。
図.本研究で創出した蛍光性RXRリガンド CU-6PMNの分子構造、RXRリガンド検出のコンセプトならびにDHA、EPAなどを用いた結合データ(論文中の図を改変)
論文情報
<論文名>
Competitive Binding Assay with an Umbelliferone-based Fluorescent Rexinoid for Retinoid X Receptor Ligand Screening.
<掲載紙>
Journal of Medicinal Chemistry
<著者>
Yamada S, Kawasaki M, Fujihara M, Watanabe M, Takamura Y, Takioku M, Nishioka H, Takeuchi Y, Makishima M, Motoyama T, Ito S, Tokiwa H, Nakano S, Kakuta H.
<DOI>
10.1021/acs.jmedchem.9b00995.
<URL>
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.jmedchem.9b00995(外部サイトへリンク)
研究分担
本研究に関するコンセプト、化合物デザインやその合成、RXRに対する結合能や蛍光物性の評価は岡山大学が中心となって行いました。本学は、評価に用いるRXRタンパク質の創出、さらに本研究で創出されたCU-6PMN のRXRに対する結合状態を分子レベルで解明しました。本研究で行ったX線結晶構造解析は、つくば市にある大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(通称 KEK、課題番号2018G006)にて実施されました。
お問い合わせ
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科(薬)
准教授 加来田 博貴
電話:086-251-7963
FAX:086-251-7926
E-mail:kakuta-h@okayama-u.ac.jp
静岡県立大学 大学院薬食生命科学総合学府(食)
助教 中野 祥吾
電話:054-264-5578
FAX:054-264-5099
E-mail:snakano@u-shizuoka-ken.ac.jp