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2006年5月23日

静岡県立大学 食品栄養科学部教授 横越 英彦

タウリン(1) 臓器に含有、疲労回復に有効

臓器に含有、疲労回復に有効

テレビのコマーシャルや健康食番組などで、タウリンという言葉を耳にする。タウリンとは何だろう。タウリンは1827年、牛の胆汁中の成分として初めて発見され、ギリシャ語の牛を表すタウロスにちなんでタウリンと名付けられた。このタウリンは、植物以外のあらゆる生物に含まれており、人でも、体のあらゆる臓器に含まれている。

最も多く含まれる臓器は心臓で、次いで筋肉、肝臓、腎臓、肺、脳などで、また、網膜や卵巣、精子などにも含まれる。これらの臓器はすべて生命現象に重要であり、体重が60キロの人では約60グラム(体重の0・1%ほど)のタウリンが含まれていることから、何らかの重要な役割を果たしていると思われる。

中国最古の薬学書である「本草綱目」中に、生薬「牛黄(ゴオウ)」の薬効が記されているが、この牛黄の主成分の1つはタウリンである。日本では、戦時中、タコの煮汁からタウリンを作り、それを疲労回復などに利用していた。例えば、ゼロ戦の戦闘機や潜水艦の操縦士は、暗闇での活動が中心で、その際には暗視野での視力が重要であり、大変な緊張感や疲労を伴った。タウリンは操縦士の疲労回復や視力の回復に有効であったという。

タウリン(アミノエチルスルホン酸)はアミノ酸と化学構造が似ていることからアミノ酸の一種と考える時もある。アミノ酸はタンパク質の構成成分として大切な栄養素で、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するが、タウリンの場合にはカルボキシル基ではなくスルホン酸基である。そのため、タンパク質の合成には利用されず、タウリンは遊離の状態で組織中に存在する。

また、タウリンは含硫アミノ酸のシステインやメチオニンから体内で合成されるので、食事から必ず摂取しなければならない必須の栄養素とは考えられていない。しかし、このタウリンを合成する能力は動物種により異なっており、猫の場合には極端に低いために、必要な量を満たせず、食事から供給しなければならない必須の栄養素である。

人の場合においても、胎児や新生児は十分な量のタウリンを合成できないこと、初乳中には大量に含まれることから、かなり必須な成分と考えられている。また、タウリンは含硫アミノ酸が体内で利用されたときの最終代謝産物であり、一見、不用な成分にも思われるが、いろいろな臓器でタウリンを積極的に取り込もうとする機構(タウリントランスポーター)が存在している。このことから、タウリンは体にとって必要な成分と考えざるを得ない。

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