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2006年10月17日

静岡県立大学 食品栄養科学部教授 横越 英彦

タウリン(10) 血液の働きをサポート

血液の働きをサポート

これまで、タウリンのいろいろな生理作用について述べてきたが、詰まるところ、ヒトの身体が常に良い状態にあるような調節にかかわっている。すなわち、生体の恒常性の維持作用といえる。身体に備わっているいろいろな機能は、時には高進し、また、低下するような場合にも改善する必要がある。

まず、私たちが健康を維持するためには、病気にならないことであり、そのためには、生体防御としての免疫機能は大変に重要である。血液は、体中を駆けめぐっており、各臓器に栄養素の供給や情報の伝達に重要な役割を果たしている。

それ故、血管と血液の正常化は健康の保持には極めて重要であり、健康診断などで検査される。各種の細菌やウイルスに感染するのは、体力が低下し、免疫力が衰えたときといわれる。この免疫力には白血球やリンパ球が重要で、細菌と戦ってくれる。白血球中には、血清の五百倍ものタウリンが含まれていることから、タウリンは何か重要な機能を果たしていると推測される。また、白血球が細菌を殺す際に分泌される次亜塩素酸や生じるモノクロラミンを無毒なタウロクロラミンに変換。リンパ組織でのT細胞やB細胞の活性化にも関与している。

よく知られていることとして、放射線被ばくにより白血球の著しい現象が起こるが、その際、尿中タウリン排せつ量も顕著に増加する。放射線被ばくに対するタウリンの効果をマウスで検討した結果、生存率が高まったので、タウリンの防御作用が推測される。

赤血球は比較的大きな形をしており、それが毛細血管などを通過するときには、自由に形を変形しなければならないが、タウリンには、赤血球膜の強化や保護作用がある。血小板は、止血などにおいて重要な機能を持つが、一方、過剰に血小板凝集が起こると心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などの危険性をはらむ。タウリンは、この血小板凝集能を正常な状態に維持する作用がある。

それらさまざまな生理作用の結果、ある種のがんに対して有効であることが示されている。例えば、ラットに発がん物質を投与して肝臓がんを誘発させる実験で、タウリンを同時に投与した場合には、発がん率が三分の一ぐらいに低下した。また、ヒト線維肉腫細胞を用いてがん転移を調べたところ、タウリンはがんの浸潤を半分ほどに抑制した。胃炎や胃かいようなどに対してもタウリンの予防効果が示されている。

先にも述べたが、タウリンは魚介類に抱負に含まれ、また、含硫アミノ酸から体内で合成される成分であるが、幾つかの魅力的な作用を示す。海に囲まれた日本では、最近、魚離れなどと言われるときもあるが、この恵まれた資源を有効に利用し、健康長寿に生かしたいものである。

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