2007年3月13日
静岡県立大食品栄養科学部長 木苗 直秀
長寿の根拠を求めて(1) 和食中心にバランス良く
我が国は平成17年度の平均寿命が男子78・56歳、女子が85・52歳といずれも世界で1、2位を争う長寿国である。65歳以上の高齢者人口は約20%であるが、2050年には32%に達すると予想されており、医療制度や介護制度のさらなる対応が急務となっている。
平均寿命から疾病などで床にふせている期間を差し引いた健康寿命は男子が72・3歳、女子は77・7歳(2002年、WHO=世界保健機関調べ)と世界一であることは喜ばしいことである。それ故、日本の伝統食である和食が多くの国々で関心を持たれている。
米飯に、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系脂肪酸を多く含む魚介類、大豆イソフラボンを含むみそ汁や豆腐が中心であるが、積極的に野菜や果物を食すること、さらに乳製品や肉類を適度にとることが望ましいと考えられている。
これらの栄養要因を満たすとともに各人に適した運動、十分な休養、ストレスを少なくすることなどが大切である。最近、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という言葉を耳にするが、腹囲とともに血圧、血糖、血清トリグリセリドなどを適正値に保つことが動脈硬化症、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病への進行を防ぐことにつながると考えられている(図)。
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静岡県立大の食品栄養科学部は平成19年4月に食品学科を食品生命科学科に、栄養学科を栄養生命科学科に名称変更することになった。開学と同時に開設され、常に食と健康・長寿との関連を科学的、総合的に解明することを目指してきた。昨年開学20周年を記念して「健康と長寿への挑戦-食品栄養科学からのアプローチ」を出版することができた。食品の機能性や安全性については常に試験管内、動物、ヒトでの科学的根拠(エビデンス)を求めて実験を進めている。