現在、下水処理法として用いられている活性汚泥法は、生分解が困難な医薬品を含む生活由来化学物質(PPCPs)の分解を想定していない。PPCPsは低濃度で生物に影響があるため、水生生物に対する予測無影響濃度(PNEC)が極低濃度である。そのため、PNECを超える濃度のPPCPsが、下水処理場の流出水から検出され、その影響が懸念されている。
PPCPsは生物学的処理法では除去が困難なため、物理化学的手法の一つである促進酸化法による分解除去法の開発が進められている。促進酸化法による分解反応は初期濃度によって、分解メカニズムが異なることから、処理性能を正確に評価するためには実環境中濃度レベル(低濃度)での実験が必要である。しかし、既往研究では低濃度のPPCPsの分析が困難である等の理由から、実環境中濃度と比較して高濃度で実験されている。
本研究では、日本の下水処理場流出水から検出されている抗てんかん薬のカルバマゼピン(CBZ)、解熱鎮痛剤のジクロフェナク(DCF)、抗ヒスタミン薬のフェキソフェナジン(FXD)を対象として、促進酸化法の一種であるフォトフェントン反応を用いて分解実験を行った。