2007年5月22日
静岡県立大食品栄養科学部教授 貝沼 やす子
長寿の根拠を求めて(5) 主食の『ご飯』をしっかり
5月の連休になると、田んぼに水が引かれ、田植えの準備が始まる。10数年前までは東海道線の電車の車窓からもじっくりとその光景を眺め楽しむことができたが、最近ではあまり目にすることもなくなり、米の栽培が激減し、日本人の主食であった米の消費量が年々減っていることが実感される。
このような食生活の変化の背景にあるのが、食の欧米化であると考えられている。ご飯を食べずにパンを、魚に代わって肉を食べるようになり、その調理法も次第に洋風化していき、脂質の多い食事内容となってきた。
その結果として、摂取エネルギーに占める脂質からのエネルギー比が増え、米などの穀類に多く含まれる栄養素である炭水化物からのエネルギー比は減少した。
健康を維持するのに望ましい適正なエネルギー比は、脂質からは25%、炭水化物からは60%、タンパク質からは15%とされているが、最近は脂質からのエネルギー摂取が30%を超える勢いである。最近問題になっている、動脈硬化などにつながるとされる状態「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」は、このような食生活も原因の1つではないかと考えられている。
この改善策の1つとして、食事内容の基本を簡単で分かりやすいコマの形のイラストで表したのが、厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」。コマの最上段に配置されているのが、ご飯やパン、めんなどの主食であり、主食をしっかり食べることで炭水化物からの摂取エネルギー比率を高めることができる。
2段目には野菜やイモ、海藻などを使った副菜が配置され、主菜より上段にあることで副菜の重要性を強調している。
食事バランスガイドでは1日にとる食事の量の目安も料理区分でいくつ必要と示されており、実際の食生活への活用が期待されている。
主食の中でも「ご飯」は、日本の風土に合った作物である米を使っている▽炭水化物が主で脂質をほとんど含まない▽自動炊飯器という専用の調理機器があり簡単に調理できる▽淡泊な味ゆえに多様なおかずと合わせやすく、バランスのとれた食事内容にしやすい▽粒で食べるためそしゃく回数が多くなる-など、健康につながる食生活をサポートできる優れた食べ物である。
ぜひ、「主食」のご飯を中心に、適量の魚や肉を使った「主菜」、たっぷりの野菜や海藻などを使った「副菜」を取りそろえた栄養バランスの取れた日本型の食生活で長寿を目指していただきたい。
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「食事バランスガイド」は農林水産省のホームページなどに掲載されている。