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ホーム > 新聞 > 長寿の根拠を求めて(8) 食生活の改善でがん予防

2007年7月3日

静岡県立大食品栄養科学部教授 大島 寛史

長寿の根拠を求めて(8) 食生活の改善でがん予防

食生活の改善でがん予防

最新版のわが国の「癌(がん)の統計」(財団法人がん研究振興財団)によると、平成16年には、約32万人ががんで亡くなり、総死亡の約三分の一(死因の第一位)を占める。部位別に見ると、男性では肺がん、胃がん、肝臓がんが多く、女性では大腸がん、胃がん、肺がんが多い。従来多かった胃がんや子宮がんの死亡率が減少傾向にある中、肺がん、大腸がんが増加する傾向にある。

ここ数年、各種がんの診断・治療技術は、目覚ましい進歩を遂げているが、各個人が生活習慣を見直し、がんにならないこと(がんの一次予防)を目指すことが大切である。

著者が静岡県立大学に赴任する前に勤務していた世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、ヒトのがんの主な原因として、喫煙(15-30%)、慢性感染症(10-25%)、食事と栄養(30%)、その他の各原因(5%以下)と見積もっている。

したがって、がんを予防するための生活習慣として、第一に、たばこを吸わないこと、他の人が吸っているたばこの煙を避けること、次に、野菜・果物をたくさん食べるなどの適切な食習慣、感染予防と除菌および治療、放射線や紫外線にあたり過ぎないこと、職場および生活環境の改善などが重要である。

がんと食生活についての多くの疫学調査(がん患者と健康な人での生活習慣の比較)から、野菜・果物を多く取る▽塩分を減らす▽高い温度や焼き焦げ、カビのついた食物を避ける▽肉より魚を多く食べる▽定期的な運動と栄養を考えた食事による成人期での体重の維持▽適度な飲酒-などの食習慣が、がんを予防するために重要であることが分かってきた。

野菜・果物の摂取が発がんのリスクを下げる部位として、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、肺、食道、胃、子宮などがある。一方、大腸、直腸がんのリスクは、野菜の摂取により減少するが、果物の摂取とは、関連がないようである。

野菜・果物は、繊維質、ビタミン類、無機質だけでなく、種々のがん抑制物質を含んでおり、発がん物質生成の予防、発がん物質の解毒、DNA損傷の防止などを通して、発がんを抑えている。

現在のところ、確実にがんを予防することができる単一の食物あるいは食品成分は知られていない。むしろ、いくつかの成分が共同してがん予防の効果をあらわすと考えられており、多くの食品をバランスよくとってさまざまな成分を取るというのが重要である。

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