静岡県立大学 食品栄養科学部がお届けする食と健康の情報サイト

  • ホーム
  • おとこの食の自立を目指して 男子厨房に入りましょう
  • マンガでみる 食品栄養科学部の紹介
  • 新聞
  • ラジオ
  • テレビ
  • グローバルCOEプログラムについて

新聞

ホーム > 新聞 > 長寿の根拠を求めて(10) 食育は“楽しい食事”から

2007年8月7日

静岡県立大学食品栄養科学部准教授 白木まさ子

長寿の根拠を求めて(10) 食育は“楽しい食事”から

食育は“楽しい食事”から

2005年に食育基本法が施行された。この基本法の中で食育は生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎と位置づけられ、とくに、子どもたちに対する食育については、心身の成長および人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたる健全な心と身体を養い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものとしている。また、静岡県が策定した食育推進計画では、基本的施策として「食を知る」「食をつくる」「食を楽しむ」ことの具体化をあげている。

筆者らが県内の小学生約600人を対象に行った「食事の楽しさと生活環境にかかわる調査」では、家庭でとる食事について「楽しい」と回答した子どもは約7割、「つまらない」または「どちらともいえない」と回答した子どもは約3割であった。食事が楽しいと回答した子どもは、(1)食事の手伝いをいつもする(2)夕食は“決まった時刻”に“家族そろって”または“大人と一緒に”食べる(3)食事中に家族と話をしながら食べる-の割合が高く、一方、「つまらない・どちらともいえない」と回答した子どもでは、(1)夕食を“子どもだけ”または“自分ひとり”で食べる(2)食事中、新聞や本を読んでいる家族がいる(3)食事の手伝いをほとんどしない-の割合が高くなっていた。

さらに、これら食事の楽しさへの影響が大きい要因と食品の摂取頻度から求めた栄養バランス得点との関係をみると、図に示すように、食事を楽しくするような環境下で栄養バランス得点が高くなっていた。また、栄養バランス得点と不定愁訴との関連では、栄養バランス得点が低い子どもには疲れやすい、風邪をひきやすい、おなかをこわしやすいなどの自覚的訴えが多くみられた。

子どもだけ、また一人で黙々と食べる食事では、食欲がわかないのは当然で、苦手な野菜や魚も大人と一緒に食事をとることで食べられるようになる。また、手伝いを通して子どもは食品の種類や名前を知り、簡単な調理技術を覚えるようになる。そうなれば、食事に対する関心も高くなり、大人と食事づくりにかかわることで、家族の一員としての自覚も強まり、家族内の会話が増えることが期待できる。

基本法が制定された背景には、不規則な食事による栄養の偏り、肥満や生活習慣病の増加、過度のそう身志向などの問題があり、これらは大人に限らず、子どもの健康上の問題としてもしばしば指摘されている。食と健康にかかわる問題の改善に向けた食育の取り組みにあたり、子どもを含む家族にとって楽しい食事、また、待ち遠しい食事といえる環境をつくることがその基盤となると考える。

  • 戻る
  • 次へ