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ホーム > 新聞 > 長寿の根拠を求めて(11) おいしい香りの発酵食品

2007年8月21日

静岡県立大学食品栄養科学部教授 廣田 陽

長寿の根拠を求めて(11) おいしい香りの発酵食品

おいしい香りの発酵食品

発酵食品には日本酒、焼酎、みそ、しょうゆ、漬物、食酢、納豆など、以前からわが国で食されてきた伝統的な食品と、ビール、ワイン、ウイスキー、チーズ、ヨーグルト、ピクルスなどカタカナで表示されるものとがある。発酵とは元来酵母によるアルコール発酵を意味したが、現在では微生物が何か有用な物質を生産している場合、その物質の名前をつけ、〇〇発酵、たとえば、グルタミン酸発酵、メタン発酵、乳酸発酵、というように使うことになっている。

最近は発酵と書かれることが多いが、正しくは醗酵、酉はアルコール発酵を行う容器、酒つぼを表した象形文字である。

発酵と腐敗とはどう違うのか。これは主観的に区別される場合もある。たとえば、以前は糸引き納豆が嫌いという人が関西には大勢いたが、最近はそのような人が減ってきている。嫌いな人にとっては納豆は大豆が腐っているとしか見えないし、台湾や中国で食されている臭豆腐も食べたことにない人にとっては、これは食べ物でないとなる。これが食文化である。

食品には3つの機能、一次機能(栄養にかかわる働き)、二次機能(感覚の機能)、三次機能(生体の機能を調節する働き)があるが、最近は異常なほど三次機能に注目が集まっている。発酵食品においてもその三次機能に関する研究がさかんに行われている。

筆者の研究室でも豆みそからポリヒドロキシル化されたイソフラボンを複数単離したが、それらの機能解明にはまだ至っていない。

発酵食品の重要な機能は、二次機能と考えられている。特にその「香り」「におい」が「おいしさ」につながっている。もちろんこれには「以前食べておいしかった」という食経験が必要である。発酵食品の多くには独特のかおり、においがあり、これらは子どものころから慣れ親しんでいる、懐かしいシグナル、安心のシグナルになる。医学的な研究でも、食べておいしいと感じると免疫機能などの生理機能が向上するとされている。

みそ汁、漬物などの発酵食品が、今後も家庭の味として残され、受け継がれること、そのような食文化も継承されることが望まれる。

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