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ホーム > 新聞 > 長寿の根拠を求めて(18) 新たな指標 『倹約遺伝子』

2007年12月18日

静岡県立大学食品栄養科学部准教授 小林 公子

長寿の根拠を求めて(18) 新たな指標 『倹約遺伝子』

新たな指標 『倹約遺伝子』

近年、日本においても肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどに代表される生活習慣病の増加が問題になっている。生活習慣病の発症には、食生活、運動といった生活習慣(ライフスタイル)が大きく関与しているので、病気になる前に健康的な生活習慣を確立し、その予防に努めることが重要である。

しかしながら、食事に気をつけていてもなかなかやせられない人もいれば、太りたくても太れない人もいる。高血圧と診断され塩分制限をしても、効果のある人とない人がいる。一方、塩分をたくさん摂取していても高血圧とは無縁の人もいる。このように病気の発症には生活習慣とともに個体が持つ体質も関係している。体質を決めるのは、両親から受け継いだ遺伝子(ゲノム)である。

ヒトゲノム研究の進展により、肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病に関係する遺伝子(「倹約遺伝子」や「食塩感受性遺伝子」など)が同定され、従来「体質」というあいまいな概念でとらえられていたものを、遺伝子(ゲノム)という科学的な指標を用いて説明することが可能になりつつある。

元来、ヒトを含むすべての動物は、飢餓と背中合わせの状況で生きてきたはずであり、食糧にありつけたときにそのエネルギーを体内に蓄えておく必要があった。「倹約遺伝子」は、エネルギー消費を倹約し、体内に蓄えておくために重要な働きをしていた。かつては人間が生きていくために必須であったはずの「倹約遺伝子」が、飽食や運動不足の現在において、肥満や糖尿病を引き起こす原因のひとつになっている可能性が高いといわれている。現在、十数個の「倹約遺伝子」が同定されているが、どの「倹約遺伝子」をいくつ持つかというところに個体差があり、それが肥満や糖尿病のなりやすさ(体質)に影響を与えているようだ。

しかし、「倹約遺伝子」を持つことがすぐに肥満や糖尿病の発症につながるわけではない。「倹約遺伝子」をたくさん持っていても、食生活をはじめとする生活習慣に気をつけることによって、肥満や糖尿病を予防することは十分可能である。「体質だから仕方がない」ではなく、自分の体質を科学的に理解することにより、それを自らの健康管理に役立てることが可能になる日も近いと思われる。

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