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2008年2月19日

静岡県立大食品栄養科学部准教授 新井 英一

長寿の根拠を求めて(20) 体の変化理解し備える

体の変化理解し備える

わが国をはじめとする多くの先進国は、少子・高齢化社会に到達している。「健康で長生き」というキーワードを基に、メタボリックシンドロームの克服に対して「治療から予防へ」と医療の分野だけでなく生活環境までも大きく変化している。2008年4月より特定健診・特定保健指導が義務化されることから、厚生労働省は働き盛りの世代に対して早期にリスクを発見し、対策を立てる自己管理システムの構築に期待を寄せている。

一方、安心して高齢期を迎える環境が完全に整備されたわけではない。問題は、高齢期というライフステージに位置づけられる身体的変化(臓器や代謝の加齢変化)について、自らがどれくらい認識しているかという点である。「若くありたい」と思うことは、心身を鍛える上で非常に大切である。しかし、若い時と同じ運動量ができる、または同じ食事量を取ることができる、と言う点で相違があることは誰しも感じるところであろう。すなわち、自らが高齢期とは、どのようなステージなのか、どのような身体的変化があるのかをしっかりと認識し、備える心が必要となる。

メタボリックシンドロームを予防するために「過栄養」ではなく「栄養制限」が絶対であるかというと、こちらも問題である。入院している高齢者の方々で共通してみられる栄養・健康障害には、タンパク質・エネルギー栄養障害(低栄養)、骨粗しょう症、嚥下性(誤嚥性)肺炎、脱水、便秘などが挙げられる。

さまざまな疾患があるため、一概には言えない部分もあるが、これらは高齢期の特徴を示す症状である。例えば、70歳代では20歳代に比べて約15%程度の基礎代謝量(心臓を動かすことや呼吸をするのに必要な最低限のエネルギーのこと)が減少する。唾液(だえき)量や消化能力の低下に伴い、食事量が減少し、低栄養になることや、かみこなしたりのみ込んだりすることが困難になると、誤嚥性肺炎を起こす危険率も増加する。また、水分摂取不足(脱水)は便秘、血栓症、脳梗塞(こうそく)などをおこす危険性を含むため、適切な水分摂取が必要となる。

すなわち、これらの症状は高齢者の生活の質を低下させることから、自らが取るべき「適切な栄養」とは何なのか? エネルギー量はどれくらいなのか?を考慮しなければならない。しかし年齢、体格や性差も異なることから、ライフステージや個人に合わせた栄養管理が必要となる。ある食材ばかりを多く取るのではなく、バランスと適量を知ることが、健康を維持する上で最も重要である。

さらなる長寿国を目指すためにも特定健診・特定保健指導をうまく活用して、自らの食・栄養について認識を深めることをお薦めしたい。

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