2006年7月4日
静岡県立大学 食品栄養科学部教授 横越 英彦
タウリン(4) 血中コレステロール低下
健康診断で血液中の中性脂肪やコレステロールの値が高いと、高脂血症として、「食事に注意しなさい」と言われる。この血中脂質の変動とタウリンとの関係が多く研究されている。
コレステロールは体内で重要な役割を果たしており、例えば、身体を構成している細胞の膜の必須成分であり、性ホルモンやステロイドホルモンの材料として、また、その分解産物の胆汁酸は脂肪の消化吸収にはなくてはならないものである。
しかし、過剰になると血液がドロドロになって詰まるといった動脈硬化症の原因となる。そこで、体内では、コレステロール量を一定に保とうとする生体恒常性(ホメオスタシス:合成と分解のバランス)により厳密に調節されている。
ラットにコレステロールの多い食餌を投与すると、血中コレステロールは著しく高くなり、高コレステロール血症を示すが、タウリンを同時に与えると、この増加が抑制される。タウリンによる血中コレステロール低下作用の内容は、悪玉(LDL)コレステロールを著しく低下させ、逆に善玉(HDL)コレステロールを増やし、全体的には総コレステロールが低下する。また、コレステロール過剰摂取による胆石の形成も、タウリンで抑えることができる。
この作用機序として、タウリンは、コレステロールの分解を顕著に促進することが明らかになった。高トリグリセライド血症に対しても、遺伝的に高血圧や高脂血症になりやすい高血圧自然発症ラットを用いた実験で、タウリンは過剰なトリグリセライドを減少させることが報告されている。
このコレステロールを分解する主な臓器は肝臓である。よく、大切なことを示すのに「肝心なこと」という言葉を用いる。この「肝心」は、肝臓と心臓を意味し、どちらも生きていく上で重要な臓器であることを表している。特に肝臓は、多くの重要な役割を担っていることから、健康診断などで、その機能を十分に果たすことができているかが調べられる。
その結果、血液中のGOT、GPT(代表的な肝臓の酵素)が高ければ、急性肝炎などの何らかの肝臓障害が起こっている可能性が示唆され、また、ガンマ-GPTが高ければお酒を控えるように勧められる。
この重要な肝臓を構成している細胞を保護する作用、例えば、脂肪がたまる脂肪肝の予防、薬物によるダメージの軽減、アルコールによる酩酊(めいてい)状態からの回復の促進作用などが、タウリンにはある。