研究内容
疾病の予防・治療に貢献できる臨床栄養管理法の構築を目指して
傷病者、健常者の「真の栄養状態」を代謝から探求する
現代社会において、栄養の過剰が懸念されている人(メタボリックシンドローム等)および栄養不良が心配される人(高齢者の低栄養等)といった栄養障害の二重負荷が問題視されています。これらを解決する手立ての一つとして「健康な食事」を摂ることが重要ですが、「健康」の定義は、人によってとらえ方が異なります。「食べていれば、健康を維持できる」と思っている方が多く、多量栄養素のみならず微量栄養素をもっと意識しなければならないと考えています。
国民健康・栄養調査において、微量栄養素の摂取不足が指摘されています。「症状が出ていないから、健康である」という考え方ではなく、日ごろから、きめ細やかな栄養素の摂取(栄養管理)が必要です。生体における「潜在性の欠乏症」を評価できる手法も構築されていません。
本研究室では、生体反応から見た栄養状態の評価法の構築を目指し、例えば、24時間畜尿法を用いて微量栄養素の摂取量把握や栄養管理に役立つ食事の内容、栄養指導のエビデンス構築に関する研究を行っています。
1.24時間蓄尿を用いた微量栄養素摂取量の把握および妥当性の評価に関する研究
生体におけるミネラルやビタミン潜在性欠乏症「生体利用(代謝)」を評価するために、畜尿法を用いて栄養状態を把握できる手法の構築を目指しています。現在、食事の負荷(付加)試験
を通じて栄養指導の評価など、人を対象とした臨床研究に取り組んでいます。
2. 高尿酸血症の管理に適した食事内容および食事指導法の構築に関する研究
高尿酸血症は痛風発作や腎臓病への進展に関与し、現在、若年者に高尿酸血症を呈する者が増えています。しかしながら、その栄養療法の構築や有効性および尿酸排泄を促進させる機能性成分の同定や機序は十分に解明されていません。そこで、健常者ならびに無症候性高尿酸血症患者を対象に、尿酸代謝に対する栄養学的エビデンスの構築に寄与する研究を行っています。
3.腎臓、血管内皮機能低下の作用機序に対する栄養学的アプローチに関する研究
現代社会の食生活は高リン食摂取の課題を有し、高リン血症を誘発し、細胞機能障害を起こすことが知られています。その作用機構の解明と治療に貢献できる栄養療法の構築を目指し研究を行っています。
過去数年間の研究テーマ
・エネルギー・糖質制限下における組成比率の違いが代謝に及ぼす影響
・リン摂取量推定に対する24時間蓄尿法および血清FGF23濃度の有用性の検討
・透析患者のミネラル管理に対する調理操作の有用性
・食餌中の糖・脂質組成比率および脂肪酸の種類がリン代謝に及ぼす影響
・血清リン濃度の管理における豆乳の有効性の評価
・脂質異常症患者を対象としたガイドラインに基づく栄養指導の長期効果の評価
・SGLT2阻害剤服用患者における栄養状態の評価
・無症候性高尿酸血症患者に対する栄養指導の効果
・食事におけるプリン体量の把握と腎臓酸負荷の評価
・マグネシウム摂取不足がおよぼす生体応答の評価
・ビタミンD代謝に影響をおよぼす食事と因子の探索
・新規ビタミンDバイオマーカーの探索
・Na/Kを考慮した食事摂取による生体応答の評価
・フレイル予防に対する健康な食事の効果