フードマネジメント研究室
静岡県立大学
食品栄養科学部
栄養生命科学科
フードマネジメント研究室
〒422-8526
静岡市駿河区谷田52-1
TEL : 054-264-5514

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「スマートミール・食環境」認証制度HP

研究内容

<研究室概要>
  フードマネジメントは,消費者への「食の提供行為」のあり方を探索する研究分野である。近年,食品の機能性成分とその様々な生理活性作用の研究が進み,疾病予防への効果が期待されている。しかし,健康食品の市場拡大,サプリメントや健康食品の消費増大の一方で,それらの長期間,高濃度摂取での安全性,有効性,他の栄養素との相互作用についての知見は不十分である。当研究室では,「食事」による機能性成分の摂取のあり方や,疾病予防に寄与しうる食品選択・組合せを用いた食事メニューへの応用について,科学的根拠をもって提案するための研究活動を行っている。研究手法は,食品素材や料理の機能性成分分析,ヒトを対象とした食品・食事摂取後の各種バイオマーカーの変動分析,短・中期の介入試験による評価を中心に行うほか,中食企業,給食産業へのレシピ提案,商品化を通した「食環境整備」の効果判定を行っている。研究成果は,外食・中食,特定給食施設における「健康な食事」への応用に結びつける。
  また,健康増進法に基づく特定給食施設には,利用者に応じた適切な栄養管理が義務づけられている。栄養管理の主体は給食であり,提供される食事が栄養計画の品質通りに提供されることが極めて重要である。医療施設,高齢者施設,保育施設,学校,事業所等の各種特定給食施設の目的に応じた食事の品質を担保するためには,深刻な労働力不足等に対応でき,かつ効率的で効果的な生産・提供管理システムが求められる。給食を介した健康の維持・増進と,それを可能にするオペレーション管理,経営管理の方策について,行政指定研究および現場との産学連携により研究を進めている。


<主要研究題目>

1. 食品機能性の日常食適用をめざすフラボノイドの調理・保存変化と生体内炎症指標の検討
  バランスの整った食事からの機能性成分摂取を推奨するため,植物性食品に広く含まれ抗酸化活性等の機能性を有するフラボノイドに着目し,日本人の日常食にからの主なフラボノイド類摂取量の検討,食品別・調理方法別のデータベース作成,「高フラボノイド食」の開発と生体内吸収動態,抗炎症効果による評価を行っています。また,高フラボノイド食の中・長期的な摂取による慢性代謝性疾患の予防効果を,ヒト介入試験により判定します。今後は中食等への実用化に向けたメニュー開発,企業との商品開発,マーケティングも行っていきます。

2. 特定給食施設の適切な栄養・食事管理,給食・外食・中食における食環境整備に関する研究
  健康増進法に基づく特定給食施設には,利用者に応じた適切な栄養・食事管理を行う必要があり、その主体は給食(食事)です。しかし,昨今は施設の種類を問わず,深刻な人手不足と厳しい経営状況にあります。
  現場で導入が進むクックチル,クックフリーズは,繁忙時を避けた調理・保存,必要時の再加熱・提供が可能な効率的生産方法ですが,栄養素の変動や利用者の摂食能力に対応した「軟化調理」の条件についてのデータはほとんどありません。さらに,大規模な設備投資を要する「ニュークックチルシステム」導入も増える一方,生産される食事の品質管理が喫緊の課題です。そこで,医療施設,介護施設等での適切な栄養・食事管理,効率的な給食オペレーションを目的としたデータの収集を行っています。また,高度化する病棟での栄養管理業務に適応しうる給食管理手法,食品ロス削減のための適切な業務管理手法の探索を行い,持続可能な給食運営の方策の提示を目指しています。
  さらに,事業所給食,外食,中食におけるヘルシーメニュー(「スマートミール」)の提供について,消費者の意識変化,提供側の経営効果等の視点から食環境整備の評価を行う。

3 .フードマネジメントを介した食環境整備の効果に関する研究
  誰もが健康的な食事をとりやすい「食環境の整備」の促進を実現するための、フードサービス産業や産業給食を介したヘルシーメニュー提供による食環境整備について、商品化計画、消費者の意識変化、継続摂取がMets予防にもたらす効果判定、経営効果、給食経営管理の視点からの評価を行います。「健康な食事・食環境(スマートミール)」、上記1の研究成果も活用していきます。

4. 静岡県におけるニホンジカのシカ肉有効利用を目指した食資源化に関する研究
  ニホンジカによる食害問題の解決に向けて,その肉を食資源として利活用するための食肉特性の解析,調理・加工法の集積,製品開発を進めます。シカ肉は,健康志向に合った食材である一方,野生動物ゆえの個体差,地域差,季節変動,捕獲方法,熟成,調理・加工方法などの様々な要因で肉質が変化します。物性,アミノ酸の測定,香気成分分析,組織観察,分析型/嗜好型官能評価により食肉特性を明らかにします。

5. 災害時における健康維持に関する研究
  近年、東日本大震災や熊本地震からも明らかなように、地震等の大規模な災害の発生時にはライフラインの早期復旧が重要な課題となっています。
そこで本研究では、電力会社の作業者の作業効率を確保し、早期の復旧を図ることを目的とし、作業者の非定常時作業量をモデル化しエネルギー必要量や各栄養素の必要量を推定し、備蓄している非常食を活用したメニューの立案を行います。
さらに、栄養マネジメントおよび食事内容の検討ために介入試験を行い、立案した非常用食事メニュー摂取の効果を明らかにします。