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食品物理学の世界

食品はタンパク質や油脂,デンプン,水など様々な素材が複雑に混ざり合ってできています.これらの素材は1/1000000 mm程度のとても小さな分子からできていますが,調理の過程で凝集,分散し,エマルションやゲルなどのより大きな構造を作り出します.私たちは食品の構造が出来上がる過程を理解し,制御することを目的に研究しています.

食品の構造保持を理解する

食品の状態は時間とともに変化します.腐敗や酸化などの生物学的,化学的変化とともに,物理的な変化も生じます.チョコレートが白く変色したり,乳を含む飲料の油分が分離したりするのはその一例です.構造がどのように変化していくかを理解することで,物理的変化を抑制することを目的としています.

食品の構造破壊を理解する

食感を生み出すには固体の素材が必要です.液体だけでも,例えば粘度を変えることにより細かな食感の違いを生み出すことはできますが,より大きな変化を生むには固体の材料を用いたほうが容易です.加熱凝集したタンパク質や冷却結晶化した油脂結晶は固体状の食品として食感を生み出します.これらの構造がどのように破壊され,どのような食感を生み出すのか,食品の構造から説明しようと研究しています.

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チョコレート

チョコレートはココアバターと呼ばれる油脂が結晶化し固まったなかに,砂糖結晶,カカオマス,粉乳などが分散した食品です.ココアバターの結晶はI~VIまで6種類が知られていますが,市販されているチョコレートはテンパリングという操作によりV型に制御されています.

ブルーム

チョコレートの表面が白く変色しているのを見たことはありますか.これはココアバターの結晶が形を変え,その表面で光を乱反射させるため白く見えるブルームと呼ばれる現象です.カビが生えたように見えますが,食べても問題ありません.ただし,ココアバター結晶の融ける温度が上がるため口どけが悪くなります.このブルームが生じる原因は一つではありません.ブルームの発生機構を知り,防ぐことも私たちのテーマのひとつです.

油脂移行

ナッツ類はチョコレートと相性が良く,チョコレートをかけた菓子類がよく見られます.しかしナッツ類は油分を多く含むため,チョコレートのココアバターとナッツの油分が相互に移動する油脂移行と呼ばれる現象が起きます.この結果として,ブルームが引き起こされることがあります.油脂移行は拡散と毛管力によって起きるとされていますが,どのような経路を移行するのか詳細はよくわかっていません.油脂移行経路を明らかにするために様々な手法により観察しています.

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エマルション

水と油が混合された状態をエマルションといいます.牛乳は水に乳脂が分散したエマルションです.またマーガリンは油脂に水滴が分散したエマルションです.

乳化破壊

エマルションをつくる操作を乳化と呼びます.乳化状態は不安定で,時間とともに水と油は分離していきます.例えば自動販売機の中で長時間保管されている乳飲料は,乳成分が分離してしまうことがあります.成分の沈殿とは異なり,一度分離したエマルションは撹拌しても元に戻りません.このような乳化破壊がどのように生じるかを調べることで,乳化破壊の抑制を目指します.

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パン

パンは,小麦粉と水,塩などの材料を混ぜ,練り合わせることでドウをつくり,焼き上げることでパンになります.ただ同じ材料でも表面と内側では硬さなど物理的な性質は全く異なります.またドウの発酵時間,ミキシングの程度により,気泡の大きさや密度といった構造も変わります.このような違いは実際の食品を観察,研究しなければ理解できません.

クラムとクラスト

パン表面のクラストは焼成過程で速やかに乾燥するため,デンプンが十分に糊化されずに結晶構造を保ったまま残ります.対して内側のクラム部分は水分が保たれてデンプンが十分に固化されます.未糊化デンプンが青オレンジの二色に染め分けられています.

気泡

パンの食感にとって気泡は大きな影響を与えます.気泡のサイズや数,壁の厚みなどにより,柔らかなクラムの性質が変わります.

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