多様な機能を持つタンパク質は、次世代生体素材の1つとして注目されています。一方で応用利用に適した機能を有する天然由来タンパク質を取得することは難しく、多くの場合はその機能を目的に応じて向上させる必要があります。タンパク質工学は上記課題を解決できる手法の1つであり、AIを始めとした情報科学技術を活用した高機能化タンパク質デザイン法の開発が世界的にも進展しています。
静岡県立大学の中野祥吾准教授および小澤洋樹さん(博士前期課程1年)らの研究チームは、コンピュータ内でタンパク質をバーチャル進化させることで、高機能なタンパク質をデザインできる新たな手法「GAOptimizer法」を開発しました。構造・配列・機能が異なる3種類のタンパク質に本法を適用してデザインした人工タンパク質は、鋳型とした天然由来タンパク質と比べて応用利用に適した優れた機能を有することを実験的に確認しました。
今回の成果は、産業応用のポテンシャルを秘めた天然由来タンパク質の高機能化デザインを可能とし、タンパク質を用いた次世代生体素材の開発を加速することが期待されます。一例としてグリーントランスフォーメーションを実現するための基盤となる高機能化酵素の開発への応用が考えられます。本成果は2024年1月3日に米国の科学雑誌『Cell Reports Physical Science』に掲載されました。