近年、食品に含まれる非栄養性成分に特異的な生理作用が見出され、その潜在的な健康維持や疾病予防機能が指摘されてきました。このような背景から、本研究室は、食品成分に関する分析化学的な研究を通じ、食品の機能性に科学的根拠を与えることを目標に研究を展開しています。
当研究室では、(1) 乳酸菌やビフィズス菌の機能性の解析(プロバイオティクス)、(2) 食品や食品成分の摂取による腸内細菌叢を介した健康効果の解析(プロ・プレバイオティクス)、(3) マダニ媒介新興感染症起因細菌の実態解析など、プロ・プレバイオティクスから有害微生物の研究を展開しています。
私たちは、食を通して、大豆のイソフラボンやワインのポリフェノールなどの天然有機化合物の恩恵を受けています。当研究室では、微生物や植物のゲノム情報を基に、天然有機化合物の生合成に関与する酵素遺伝子の働きを調べ、新規な天然有機化合物を微生物で生産しています。
酵母や麹菌は、古来よりパンや味噌・醤油、酒類などの製造に用いられてきた、人類となじみの深い真核微生物です。私たちはこれら真核微生物の関与する発酵プロセスの分子的理解と、酵母・麹菌の分子育種を含む、新産業への展開を目指した研究をしています。
食品を加工する際の成分変化について探究し、その意味を明らかにすることで、新しい加工技術の研究をめざします。新しい加工技術によって、より安く、より安全で、よりおいしい食品の開発を支えます。
産業的に高価値な食品開発を目指し、化学の力で“味と香り”をデザインする「おいしさの分子設計技術」、また皮膚や内臓など“身体が感じる味と香り”をコンセプトとする新しい機能性食品の開発研究に取り組んでいます。研究成果は、食品だけでなく香粧品や医薬品の開発にも繋がります。
蛋白質が持つ多様な機能は、食品産業を含む幅広い分野で活用されてきました。私たちは、ビックデータから得られる情報を活用することで、低コストで蛋白質の機能を向上させる技術を開発、多くの企業・大学と共同で技術の有用性を検証しています。
植物性食品に含まれるファイトケミカルは、病気の予防・治療から美容まであらゆる可能性を秘めています。生活習慣病に対して予防効果が期待できるファイトケミカルに着目し、独自に開発した物質変換反応を用いて環境に優しい効率的な合成に取り組んでいます。
生活習慣病の発症に関与する遺伝要因と環境要因(特に食生活)の相互作用を調べています。また、モデル動物である ショウジョウバエを用いて生活習慣病関連遺伝子の機能やステロイドホルモンの産生制御機構について研究しています。
現在、食品の安全性(化学物質、食中毒、食品添加物、放射能等)に関する問題が起こっています。当研究室では、日常的に摂取している食品のヒトに対する安全性、機能性を評価し、また制御方法を開発することを目的として、研究を行っています。
食品のおいしさにとって舌触りや歯ごたえといったテクスチャーはとても重要です。食品を構成するタンパク質、脂質、炭水化物によって作られる構造を観察し、食品の物性との関係を明らかにすると同時に、新たな構造の創出および物性の制御を目指しています。