お茶と資源循環とエネルギーパーク −新春に夢を語る−
助教 斎藤 貴江子 (Assist. Prof. Kieko Saito)1. はじめに
お茶は静岡県の代表的な農作物で、その機能性は今では広く知られていて世界中で飲用されています。♪夏も近づく八十八夜….と歌われていますが、一番茶は4月下旬から5月上旬に収穫され、その味わいもさることながら香りにも心が癒されます。また、ワサビも代表的な農作物で、中伊豆をはじめ、静岡市有東木で栽培が行われています。そのツーンとした香りや味は料理を引き立たせたり最近では抗菌作用や生体に対する機能性が注目されています。植物は自由に動けないかわりに様々な機能を持っていて私たちが思っている以上に繊細な生き物です。(植物についてのリレーコラムがあります;2号谷晃先生、13号藁科先生)茶やワサビの有効性は、次の機会に話したいと思いますが、現在の私の研究テーマは静岡の特産物の茶とワサビの生理機能を探求することです。
2. 茶の水耕栽培
お茶には、1)酸性土壌を好み、2)他の植物にはあまり有用でないアルミニウムを必要とする生育特性があります。そのためアルミニウムを添加した酸性(pH4.3)養液を用いて根の生理機能を研究するために始めた水耕栽培でしたが、幼苗が成長した茶樹のその花の可憐さと甘い香り、また、新芽の鮮やかさにはとても心癒されるものがありました。茶園で新芽を見る機会はあっても、花やその根っこを見ることなどあまりないのではないでしょうか。(左図は実験用に用いている水耕栽培の苗;下図は成長が盛んな新芽、花、根)
温室内で栽培して新茶を一年中味わい、みんながもっとお茶に親しむことができれば、と思いましたが一つだけ難しいことがありました。それは寒冷期に温室を加温するためのランニングコストでした。そのときひらめいたのが太陽光発電です。試行錯誤の末、小規模ですがソーラーパネルを設置してその発電を利用することができました。まだまだ試験的に行っているだけですが、温室を見学に訪れた地元草薙の長谷川紘司さんがNPO法人グリーンエネルギーしずおか(代表:青木茂理事長)の会員の方々に紹介したことがきっかけとなり、「太陽光発電を用いた茶の植物工場化」の共同研究プロジェクトが立ち上がりました。
左の写真はNPO法人グリーンエネルギーしずおかの皆さんが見学に来た際に筆者が説明している様子です。奥にあるのが成長した茶樹です。
右の写真は温室の外に設置されたソーラーパネルとNPO法人グリーンエネルギーしずおかのみなさんです。
3. 資源循環
NPO法人グリーンエネルギーしずおかは、1)市民立新エネルギー創出事業、2)新エネルギー普及啓蒙事業、3)省エネルギー事業などの活動を展開しています。また、新エネルギーパークを県内に設置することを目標にしています。
国や県でも限りある化石燃料と地球温暖化防止のために太陽光をはじめバイオマスを用いた新エネルギーによる循環型社会の構築をめざしており、NEDO(独立法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は昨年、「新エネ百選」として、全国の新エネルギー等の取り組みを評価し地域にマッチした地産地消型で先進的、先導的な事例を選定しました。静岡県として選定されたのは、以下の3カ所です
- オイスカ高等学校(浜松市):太陽エネルギー分野
「エコスクールを目指す施設設備の新エネルギー化と環境教育への活用」 - 静岡油化工業株式会社(静岡市):バイオマスエネルギー分野
「食品廃棄物(オカラ)からのバイオエタノール製造と廃食油からのバイオディーゼル燃料製造」 - 東京発電株式会社(伊豆市):水力エネルギー分野
「水力発電再生事業(落合楼発電所)」
もっといろいろな取り組みが行われて県内に新エネルギーパークができたら楽しいと思いませんか?
もちろんそこに新エネルギーを用いたお茶の植物工場ができたら最高なのですけれど……。
そんな夢を見ながら今日も地道に仕事を続ける私であります。Cheer me up!
4. おわりに
近い将来、私が大好きな「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の映画にでてきたような“ゴミを入れたらすぐにエネルギーにしてしまう装置”が本当にできるかもしれません。未来の研究者にエールを送ります。
最後に、環境の仕事をする研究者として一言;
循環型経済システム構築のために、 「リデュース(reduce)、リユース(reuse)、リサイクル(recycle)」の3Rでごみゼロを目指し、限りある資源と地球環境の保護を!
(2010年1月:文責・斎藤貴江子)
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